補助金食いの「植物工場」 次世代技術でついに黒字化なるか

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de373acef5caa43c70b9e2c3a40e6764栽培環境を自動管理し、野菜を周年生産できる「植物工場」は、既に数十年前から運用されてきた。現在一般的なタイプは2つある。自動型ビニールハウスと、最近になって登場した大型の閉鎖型施設だ。後者では、生産性を高めるために施設内の環境が完全に制御される。

複数階層の施設でベルトコンベヤーを使った野菜生産のイメージは、世界人口が向こう25年で70億人から90億人に増加する見込みであることを考えれば非常に頼もしいものだ。国連は、人口増加と生活基準の向上により世界の食料需要はほぼ倍増すると予測している。

だが、工場産野菜普及への取り組みは現在、大きな課題に直面している。7月27~29日に東京ビッグサイトで開かれた施設園芸・植物工場展に出展したパナソニックAVCネットワークス社マーケティング担当アグリ事業推進室主幹の松葉正樹氏によると、日本の植物工場の約7割は赤字だ。同氏はさらに個人的な感覚として、実際の赤字事業の割合は9割に近いのでは、とも語った。

同展示会に出展した他の事業者らも、概ね同じ見解だった。政府の補助金なしではとうに倒産している事業者もいる。植物工場技術の最前線にいる日本でさえこのような状況なのだから、他国の植物工場運営者らも政府の支援なしで操業を続けるのに苦戦していることだろう。

松葉氏は、黒字化に向けた課題は複数あると指摘する。その代表が、高い運営費だ。国内の向上の大半は人工光源として蛍光灯を使っており、発熱を相殺するための空調代を含めた光熱費を押し上げているという。

最新の大型工場では蛍光灯の代わりにLED照明が使われているが、松葉氏によれば、作業員の多くは照明の適切な制御方法に関するノウハウが不足しており、最大限の効果を引き出せていない。

植物工場の歩留まりは現状60~70%と低く、「家庭菜園と同じレベル」(松葉氏)だ。これは、室温が不均一なために発育が妨げられ、床から天井まで幾層にも重ねられた棚の位置によってサイズが異なる野菜が育ってしまうためだ。

また、十分に自動化されていない工場も多く、人件費が経営を圧迫しているという。

パナソニックはこうした一連の問題に鑑み、「政府の補助金なしでの黒字運営」を約束する自動栽培システムをワンストップで提供している。

同システムは歩留まりを95%にまで高められ、運営費も従来型の工場の半分だという。これは、LED照明の細やかな制御によって、消費電力を従来の蛍光灯工場比で6割削減することに成功したためだとしている。さらに、最先端の空調技術により、床から天井までの棚間温度差を従来の4~6度から1.5度以内に改善。植え替えや肥料散布などの作業を自動化することで、人件費も5割削減できるという。

松葉氏は、場所さえあれば誰でもこのシステムを導入し、質の高い野菜を生産できると語る。導入費は200万ドル(約2億1000万円)からで、投資回収に要する推定期間は7~8年だ。

しかし、これほど高度なターンキー式システムをもってしても生産品の価格を抑えるのは難しく、例えばレタスの価格は一般的なスーパーの2倍近くになる。だが、均質で味もいい野菜を生産できることや、有機栽培の上を行く品質を実現できる(外環境からの汚染を完全に防ぐことができる)ことから、飲食店など一部の顧客に訴求できると、パナソニックは強調している。

安倍晋三首相は27日、事業規模で28兆円の経済対策を発表。このうちの大部分は農業分野が対象で、パナソニックには今後、電機メーカー各社との競合が見込まれるだろう。

例えば富士通は2012年から、屋外やビニールハウスでの栽培管理を一括して担うクラウドベースのITサービスを提供している。その対象は最近、植物工場にも拡大。2013年には、政府の補助金制度を利用し、福島県の半導体工場の一部を、食事療法が必要な人向けの低カリウム野菜の栽培工場に作り替えた。

東芝もまた、野菜工場業界に参入。2014年に、神奈川県横須賀市の遊休施設を利用した「東芝クリーンルームファーム横須賀」で、ほぼ無菌状態でのレタス、ホウレンソウ、ミズナなどの生産を開始した。

まだ駆け出しの植物工場業界にとって、競争の増加は好ましいことだ。工場産の野菜がスーパー並みの価格になるには、まだ何年もの技術進歩が必要なのだろうから。

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